花のうた
「それを見ないわけではないのに
勤めにいそぐ駅までの道の
どのへんにこぶしが咲き
れんぎょうが咲き
沈丁花がかおるのかを
僕は知らなかった
なんと多くのことに気がつかず
ただひたすら道をいそいでいたことだろう
遅刻すまいとただそのことしか
念頭になかったかのように
五十歳を過ぎたある日突然勤めを止め
これからどうすればよいのか
見当もつかなかったのに
その日から僕には
見えなかったものが見えるようになった
いつも通る道のあちこちに
さまざまの花が咲いているのが」
「花のうた」 黒田三郎 (小学館刊行)より引用。
何とも切ない、うたである。勤めている間に、何故見え
なかったのだろうか。
この詩の主人公は、きっと精一杯働いていたのだろう。
でも、働いているうちに、見る花のほうが、明日の、より
良い仕事への活力になる様な気がしてならない。
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